憧れ

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今日は待ちに待った日曜日、四葉ちゃんと動物園に行く日だ。
姉妹二人っきりでおでかけ。これもデートっていうのだろうか。
この日のために花穂はママに新品のブラウスをおねだりした。おそろいのスカートもおねだりしたのだが、誕生日でもないし、そういくつも買ってはもらえない。
「こんなことなら、普段から、もっと、ママのお手伝いしておけば、よかったなぁ・・・・・・。」 そんなグチをいっても始まらないので、今自分がもってる服で精一杯のおしゃれをした花穂は、四葉ちゃんとの待ち合わせ場所である駅前に向かって走っているところだった。 「ど、どうしよう・・・・・・このままじゃ、遅刻しちゃうよぉ・・・・・・」 出発時間ギリギリまで服を選んでいて、いざ出発というときにお財布を入れたポシェットが行方不明なことに気づいたのだ。結局「忘れないように」と寝る前に枕もとに用意しておいたことをすっかり忘れてしまっていただけなのだが。

四葉ちゃんは花穂の姉。半年前までイギリスに住んでいたのだが、ある日突然日本にやってきた。それまで花穂は自分の姉が外国にもいるなんてこと、サッパリ知らなかった。ママも一言もそんなことをいったことはない。それに姉妹なのに一緒に住まないっていうのも不思議だ。きっと「オトナの事情」っていうのがあるんだろうな、と思って、花穂も詳しくは聞かないことにしていた。
でも四葉ちゃんはいろいろ不思議なところがあるので、花穂はどうしても興味をひかれてしまうのだった。
電信柱のかげから突然現れたり。
2階の教室の窓から飛び降りて次の瞬間にはグラウンドを走っていたり。
突然派手な衣装に身を包んだり。
まるで、むかしお兄ちゃまと一緒に見た「奇術師」みたいだった。
でもほんとうのところは、そんなことに惹かれたんじゃないのかもしれない。 「花穂ちゃーん、遅いデスよ〜っ」 「よ、四葉ちゃん、ゴメンね〜〜っ・・・・・・あっ」 コロン 「あっ、花穂ちゃん大丈夫デスか!?」 「いたたたた・・・・・・・・・・・・あっ・・・・・・」 派手に転んでしまったせいで、ひざ小僧に血がにじんでいた。 「花穂ちゃん、大変デス!はやくこれで消毒を・・・・・・」 花穂が顔をあげると、なんと四葉ちゃんの手には噴射すると霧状になる消毒液とバンドエイドがあった。みるまに手当てを完了させると、四葉ちゃんはにっこり微笑んで 「これで大丈夫デスね!でも・・・・・・動物園はどうしマショウ・・・・・・」 って考えるポーズをとった。
そう、花穂が四葉ちゃんにひかれるのは。
花穂の様子を伺いながら四葉ちゃんは続ける。 「ウ〜ン・・・・・・痛そうデスね・・・・・・今日はあんまり歩かないでいいように映画に変更しマショウか?」 優しくて。 「それともあそこのベンチで、兄チャマ情報のコウカン会にしマスか?」 機転が利いて。 「四葉ちゃん・・・・・・なんで救急道具なんて持ってたの?」 「クフフフ、探偵たるものいつ命を狙われるかわからないデスからね!」 ここぞというときにしっかりしていて(?)。

花穂はいつかこんな姉のようになりたいと、ひそかに思うのだった。


あとがき

しばらくテキスト形式で放置してたものを整形しました(2003-12-18)。このSSは結構お気に入りですね。これはしすぷりんくさんの閉鎖時に、募集締め切り前の2時間半くらいで書き上げたものです。マリみて読後でマリみての書法を意識して書いたのですが、どうでしょうかねぇ。個人的にはそれのお陰で多少まともなSSになったとはおもっているのですが。

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